208と209

          僕が双子と一緒に住んでいた時のこと

     いろいろな事情があるもんだ

     問題は彼女たちがそっくりなこと

     区別がつきやしない

     髪の形も ホクロの位置も 歯並びも

     何から何までそっくりだ

     僕はロゴ入りのTシャツを買ってやった

     208と209

     これで少しは区別がついて落ち着くよ

     彼女たちは下着を着けていない胸を見せながら

     シャツを取り替えた

     「これでどう?」

     「僕はどうすればいい」

     「気にすることないのよ」と208のTシャツを着ていた209の子

     「いいんじゃない」と209のTシャツを着ていた208の子

     それもそうだな

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アイビューラー

いつもの通学バス

     バスが止まって 女の子が二人乗ってくる

     違う制服

     真面目そうな女の子と不良っぽい女の子

     いつも僕の前の席に座る

     真面目そうな女の子は窓の外を見ている

     不良っぽい女の子はカバンを探ってアイビューラーを取り出した

     バスが揺れても気にしない 一生懸命な君

     誰に見せるのかな?

     好きな男の子はいるのかな?

     バスが止まり 君は降りる

     君を追いかけて見ていると

     君は走りだして 手を振った

     僕は回りを見渡し 自分を指差した

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マスカラ

           見慣れない服を着て

     君は部屋を出ていった

     残された化粧品

     マスカラ

     アイシャドー

     アイブロー

     リップグロス

     ファンデーション

     マットワックス

     リムーバー

     コンシーラ

     チーク

     リップライナー

 

     君と付き合うまではその使い方を知らなかった

     でも 素顔の君が一番好きだった

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君のおかげで猫までなくしたよ

猫にエサをやるのは私の日課だった

     妻が駆け落ちしてからもそれは続けた

     探偵社から連絡が入った

     日帰りでいける場所だった

     三食分の猫の餌を準備して私は出かけた

  

     二階立ての小さなアパート

     出てきたのは髪を染めた男だった

     私はその男をおもいっきり殴って アパートを後にした

     自宅に帰ると猫の姿が見当たらなかった

     一週間たっても猫は帰ってこなかった・・・

     君のおかげで猫までなくしたよ

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氷砂糖

       手術の後 

     久し振りに実家に帰った

     庭で煙草を吸い 夕食を食べた

     「タバコは止めきらなかったんだ」と寂しそうに父がいった

     瓶に入った半透明な

           長方形の小さな固まり

     何かと聞くと氷砂糖だと母が答えた

     「タバコの変わりにくわえておくと口寂しくないわよ」

     「そうかもね」とぼくは答え 

         氷砂糖を一粒口にくわえた

     甘くはなかった

     懐かしい味がした

     煙草をやめようかと思った

     

 

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    ピンサロの女の子に恋をして

     一泊旅行に誘った

     行きの電車の中

     「私のひいお婆さんは被爆者なの」と彼女がいった

     私は生返事をした

  

     翌日 鳥島に渡った

     崖の上の台地に海鳥が一杯巣を作っていた

     上空にも海鳥がいっぱいだ

     女の子は卵を一つ手にとって抱えた

     「ねえ 私が抱いたら奇形の雛が生まれるかしら?」

     「そんなことはないさ」と私は答えた

  

     突然 爆音がしてヘリコプターが島の近くを通っていった

     軍用ヘリだ

     私は一抹の不安を覚えずにいられなかった

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誕生花

     人は何かを見る度に何かを思い出す

     僕は苺を見る度に君を思い出す

     君が口ずさんでいた『プライド』

     君の横顔

     君の香り

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一人の部屋

 

     君と出会うまでは

     独りぼっちの寂しさに気づかなかった

     一人の部屋の中

     時計の針が進む度に

     君の顔を思い出す

     君と出会うまでは

     ビデオを観ているだけで楽しかった

     一人の部屋の中

     同じシーンを繰り返す度に

     君の唇を思い出す

     君と出会うまでは

     音楽を聞いているだけで楽しかった

     一人の部屋の中

     同じ音楽が流れる度に

     君のぬくもりを思い出す

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ボブ・ディランの息子

     砂浜に車を止めて

     二人寄り添って座った

     カーラジオからはボブ・ディランの曲が流れている

     天に瞬く星の間で 僕らは長いキスをした

     堤防の脇に車を止めて

     海辺まで歩いた

     砂浜に一人座っていると涙がこぼれてきた

     車に戻ると カーラジオからはウォールフラワーズの曲が流れていた

     「ボーカルはボブ・ディランの息子だそうです」

     また新しい一つが始まる気がする

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200本のたばこ

     煙草も恋もセックスもやめられない

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«雨やどり